RMの1stソロアルバム『Indigo』よりアンダーソン・パーク(Anderson.Paak)とコラボした『Still Life (with Anderson.Paak)』の歌詞の和訳と詩に込められた意味を解説
Still Life (with Anderson.Paak) 楽曲紹介
この楽曲はHIPHOPの洗練されたサウンドが際立つ楽曲で、『Yun』で幕を開けた『Indigo』の音楽を上昇気流に乗せる最高に楽しい一曲です。
RMはキーとなる“Still Life”という言葉に力強さを求めアンダーソン・パークにコラボを依頼したそうですが、彼の持ち味であるファンキーでソウルフルな声質がブラスサウンドの印象的なトラックと見事に調和しておりこの曲の魅力を最大級に引き出しています。
アンダーソン・パークといえば、2022年、ブルーノマーズとのユニットSilk Sonicがグラミー賞を“総ナメ”したことも記憶に新しく、グラミーアワードではBTSがエントリーしていた賞の発表前にも緊張した面持ちで座っているメンバーたちを気にかけ盛り上げてくれていた様子も微笑ましくとても印象的だった、公私共にとても魅力に溢れるアーティストです。
そんな彼らの親交から生まれた『Still Life』とは、その言葉本来の意味の“静物”と“It's still life(これは依然として人生だ)”という2つの意味を重ね、RM自身のアーティストとして額縁の中に飾られているような側面としかしその額縁に閉じ込められることなく前に進み続けている…というメッセージを込めた一曲だそうです。
Still Life (with Anderson.Paak) 日本語歌詞・和訳
#Indigo
— しお (@888s_i_o888) 2022年12月6日
2. Still Life (with Anderson .Paak)
日本語歌詞・和訳 pic.twitter.com/IDUwpFrQ01
以下2:05あたりから歌詞にないRMとアンダーソン・パークの会話部分の日本語訳です。
RM:ヘイ、パーク!
Paak:何だい?
RM:僕が何をしているか、何を言っているか分かるかい?
Paak: あぁ、君の言いたいこと分かるぜ
RM:まぁしょうがないよな、人生なんてなるようになるし...
Paak: 自分のやるべきことをやればいいんだよ
RM:あぁ、そうだな!行こうぜ!!!
Paak:さぁこっちへ来いよ 行くぜ!!
RMの“shit happens in life but you know what happens is what happens......”の部分は“しょうがないよな、人生なんてなるようになるし”と訳していますが「shit happens」はスラングで「しょうがない」という意味になるそうです。
また会話中にたびたび出てくるFワードは強調の意味として使われているそうなので「let's go」はとても力強いニュアンスになるかと思います。
※公式の歌詞のある部分も聞き取りの会話部分も日本語訳には意訳を含む場合がございます
歌詞解説・考察
RMはタイトルについて、美術館に通い始めた頃、韓国語の“静物”を英語では“Still Life”と呼ぶことを知りとても妙に思ったことからこの曲の物語が生まれたのだと語っていました。
花に例えると、「韓国語の“静物”(日本語に於いても同じ意味)=現実の花は生きているものではあるがキャンバスに収められた花は動くことはなく死んでいる生命」であるのに対し、
「英語の“Still Life”は画家が絵の具を塗った瞬間から永遠の生命を吹き込まれた=100年前に描かれたもうとっくに枯れている花が絵の中ではまだ生きている」というように捉え、この言葉の違いに面白さを感じたのだそうです。
KPOPアーティストとしてのRMは、常に人々に注目され、自分自身もそれを意識していることからいつも展示台の上に置かれているものだと思っている。静物のようにキャンバスの中に収められているが僕は立ち止まることなく変わり続ける。それが歌詞の中の“止まない静物”というこの曲の物語となっているそうです。(『Indigo Album Magazine Film』 談*1)
一曲を通して自身を展示台に置かれた美術品として喩えているこの楽曲の中で、中盤の“Errday is my day 1, brotha”からのverseでは、過去、あるいは現在も彼らを嘲笑しヘイトを向けるものの展示台に乗ることさえできなかった先輩たちへの皮肉とも取れる言葉が並びますが、この部分はBTSの初期の楽曲やAgust Dの曲中に登場する“난 베끼는 걸 베끼는 놈을 잡아다가” から始まる、デビュー当時彼らを過剰なまでに嘲笑していたラッパーたちに向けた“飯を奪われた先輩たちの嫉妬で生まれる騒音”という意味のSUGAのリリックによく登場していた出来事や、BTS FESTAで公開されたラッパーラインによる『Ddaeng』のRMパートで“헤이러도 없는 랩퍼들은 좀 닥쳐(ヘイターもいないラッパーたちはちょっと黙ってよ)”と笑いを堪えているような手法でラップするパートを彷彿とし、個人的にとても好きなverseです。
またMV中、水に濡れる花の絵が登場しますが、額縁におさまり立派な絵の具で描かれたわけではなくメモに簡単に描かれた花を展示台の上に置かれたKPOPアーティストとしての“RM”と捉えると、
このアルバムのタイトル曲である『들꽃놀이 / Wild flower 』の“華やかだがすぐに消えてしまい片付けなければならないものが多い花火より、穏やかに咲く野花のように生きていきたい”というテーマにも繋がっており、さまざまな色合いの楽曲を集めた『Indigo』というアルバムの中でRMが今語りたい想いや覚悟の一貫性を感じることができ作品を一層深みのあるものに昇華しているのではないかと思います。
*1:RM 'Indigo' Album Magazine Film - YouTube