MENU

BTS Jimin(ジミン)「FACE」3 Like Crazy【日本語歌詞 / 和訳 / 解説・考察】

 

BTS Jimin 1st ソロアルバム『FACE』より、『Like Crazy』の韓国語歌詞、英語歌詞などすべての和訳(日本語歌詞)と、音楽面から紐解く楽曲解説およびMV考察など、『Like Crazy』をより深く味うための楽曲徹底解剖です。

 

 

 

youtu.be

 

Like Crazy  日本語・和訳

 Like Crazy


彼女は言う
Baby、考え込まないで
今夜、ここには悪いものなんてないの
Baby、離れてもいいのよ
そばにいてね 今日までだけは

僕が行く先を見て
僕を浸す一晩中(向こう側へ)
朝も
酔いしれては やってこないように

騒がしい音楽の中で
薄れてきた僕
ドラマのような見え透いたストーリー
慣れていく
君が知る僕を取り戻すには遠くまで来てしまったのかな
そう僕は分かってる
分かってるのさ
君も、僕も

僕はむしろ
光の中へ迷い込んで
光の中へ迷い込んで
気が狂いそうさ
この夜の端を掴んで
毎晩
君は僕を高く高く回すんだ
君を抱く月
味見させて
僕を乗せてって
(あぁ、僕は堕ちていく)
良い夜になりそうだね
(あぁ、僕は堕ちていく)
永遠に 君と僕


鏡の中に映る僕
とめどなく狂っていく
生きてるって感じるんだ、暇つぶしさ


僕はむしろ
光の中へ迷い込んで
光の中へ迷い込んで
気が狂いそうさ
この夜の端を掴んで
毎晩
君は僕を高く高く回すんだ
君を抱く月
味見させて
僕を乗せてって
(あぁ、僕は堕ちていく)
良い夜になりそうだね
(あぁ、僕は堕ちていく)
永遠に 君と僕


いつか僕を壊すだろう
このままじゃ壊れてしまうんだ
いやだよ 僕を起こさないで
この夢の中にいたいんだ、救わないでくれよ
僕を救おうだなんてしないでくれ
僕たちの方法が必要だ
僕たちが夢を見続けることができる方法が

 

 

※和訳は意訳を含みますので他サイト等への転載・転用は固くお断りしております。

 

 

 

 

楽曲/MV 解説・考察

 

このアルバムのタイトル曲でもある『Like Crazy』は、シンセポップジャンルのどこか懐かしさの漂う楽曲で、ジミンの好きな映画『Like Crazy』からインスピレーションを受けて作成された楽曲です。

夢の中で愛した相手を探しながら苦しみもがき、華麗な光に閉じ込められ自分を失っていくが、それでも永遠に夢の中に留まりたい…という詩の内容をまるで一本の映画のように見事に表現したボーカルの魅力が光る作品です。

 

この楽曲が収録されているアルバム『FACE』のコンセプトに“心の奥底にあるものと向き合う顔”というキーワードがあります。

心の奥底のから発せられた波動が“表面的な顔”を通過して他者に届き共鳴していく。
アルバムのアートワークのデザインにも反映されているこのコンセプトの“心の奥底にあるもの”と“表面的な顔”が融合していく様子が楽曲の詩だけではなくサウンド面、またMVのあらゆるシーンに散りばめられています。

サウンド面やMVを紐解く上で予備知識として持っていたいのが“陰と陽”という概念です。

“陰陽の法則”という言葉も有名ですが、その言葉を聞いたことがない人でも、白と黒、太陽と月、男性と女性といったものたちから“陰と陽”のイメージを想像することができるのではないでしょうか。

 

 

楽曲解説・考察

 

この楽曲は映画『Like Crazy』からインスピレーションを受けた…という情報通り、jiminの歌の部分も恋人たちが会話しているような場面から始まります。
“She’s saying Baby, 생각하지 마(彼女は言う、Baby、考え込まないで)”から始まる最初のVerseのJiminのボーカルはまるで女性の声のように艶やかで優しい色合いをしています。次のVerseではガラッと歌声が変わることからも、冒頭では女性性を、その後に続く部分では男性性を表現しているのではないでしょうか。

歌が始まってからバックに流れる音も絶えず左右に揺れるような音作りがされています。

サビ部分のラスト“Give me a good ride”からのフレーズが終わり間奏に入ると、女性のコーラス、Jiminの息切れのような声、規則正しい音形が繰り返されるフレーズなど全く別の種類の音が同時に鳴り響きますが、女性の声とJiminの息のような声はサビラストの歌詞の様子を音で表現したものなのではないかと解釈しました。
相反するものが繋がっていく様子を表現した間奏から、“鏡の中に映る僕”から始まる中間部ではJiminのボーカルが高音域と低音域に重ねられています。
このことは詩の中の鏡の中の自分(陰)と外側にいる自分(陽)を音楽的に表現している部分です。

そして最後のVerseでは2つの声が次のように重ねられています。

This will break me

This is gonna break me(break me)

No don’t you wake me(wake me)

I wanna stay in this dream, don’t save me

Don’t you try to save me(save me)

I need a way we(way me)

I need a way we can dream on(way we can dream on)

 

カッコ内のコーラスはメロディの最後の言葉を繰り返していますが、言葉に注目すると最後のフレーズを除いて、元のメロディ部分のリリックの内容とは反転してしまっていることが分かります。

分かりやすい部分を取り出すと

“No don’t you wake me(起こさないで)”に対して“wake me(起こして)”

“Don’t you try to save me(僕を救おうとしないでくれ)”に対して“save me(僕を救って)”

そして最後のフレーズ“僕たちが夢を見続けることができる方法が必要だ”という部分では2つの声が反転することなく重なり幕を閉じます。

“僕たち”という言葉は、この2つの声の持ち主を指しているのだと思います。
2つの声を一人の人間の中の陰陽ではなく、モチーフとなった映画の恋人、あるいはJiminとARMYとの関係性に置き換えて解釈できることもまたこの楽曲の大きな魅力だと思っています。

 

 

MV考察

MVのストーリーの概要です。

‘Like Crazy’ MV

 

1

部屋の中で一人まどろむ白い服を着たJimin。

ライトが点滅し切り替わる同じ部屋の床は大量の泥で埋め尽くされている。

白い服のJiminは、突然どこかから伸びてきた黒い服を着た泥だらけの手に引っ張られる。

 

2

放り込まれたように場面は転換。
あたりを見回すように戸惑いながらもクラブに足を踏み入れるJimin。

楽しそうな周囲の人々に流されるようにその場を楽しむJimin。

 

3

廊下のシーンでは、進みたい方向と逆行する人の波に揉まれ思うように前進できない。

点滅するように切り替わった一人佇む廊下のシーンでは壁から大量の泥が流れ込んでいる。

 

4

再びクラブのシーン。口づけをかわす男女や女性客の姿の中で、一人立ち尽くすも再び周囲の雰囲気に溶け込み踊り狂う。

一人で歩く女性をふと目で追い、彼女を探すように店の中を歩き回る。

たくさんの人に囲まれているが誰の顔も見えず一人きりのJimin。

 

5

化粧室で鏡と向き合う。点滅する部屋の蛍光灯。

化粧室の壁に“Set Me Free”の落書きが。

 

部屋の壁が崩壊し、口づけを交わす男女の映像の上で歌うJimin。

 

6

再びクラブのシーン。

冒頭の部分とは違い誰とも戯れることなく一人佇み青い光に照らされている。

これまでの映像が巻き戻され、廊下で彼の行手を阻んでいた人の波も逆行し流れ出ていた泥も止まる。

 

7

クラブの床に広がった泥を踏みしめながら部屋に戻ったジミンの手は、冒頭彼を引っ張って行った黒い服を着たあの手のように泥だらけになっている。

 

泥のついた手でカメラをなぞるJimin。

MVの中では、部屋のライトが点滅し綺麗な部屋から泥だらけの部屋に切り替わったり、騒がしい場所から一人きりの空間に切り替わったりする描写が度々出てきます。

SF映画などでライトが点滅し一瞬別の空間の映像が挟み込まれる場合、その世界は裏側の世界であったり別の次元であることはお決まりのようになっていますが、このMVの中でも表の世界と裏の世界を切り替えることで、“表面的な自分”と“心の奥底の内なる自分”を表現しているのではないかと思います。

 

“泥”というものの重たくて汚れてしまったようなイメージからネガティブな感情が彷彿とさせられます。
最初の部屋にいるJiminは、足元は泥で埋め尽くされているにも関わらずそれに気づいていない、あるいはないものとして過ごしているといった描写なのではないでしょうか。

 

続くクラブで踊り狂うシーンから鏡と向き合うシーン。
ここで登場する男女がキスをしていたり体を寄せ合い踊っているのは、楽曲解説でも触れた“陰と陽”が繋がっていく様子を男女に置き換えて表現されているのではないかと考えます。

 

そして内なる自分と向き合った先で、靴裏に泥をつけながら再び部屋に戻った白い服を着たJimin。その手は泥だらけになっており、一人のJiminの姿の中に“白い服と黒い泥”といった正反対の色が存在することはそのまま“陰と陽”が統合された描写のように見えました。
この“陰と陽”というキーポイントは、BTSの‘LOVE YOURSELFシリーズ’や‘MAP OF THE SOUL’のヒントになったユング心理学に繋がっていたりとこれまでも幾度となく登場しているキーポイントです。

 

また、冒頭のシーンで白い服を着たJiminを夢の世界へ引き摺り込むように引っ張っていった黒い服を着た泥だらけの手に『Set Me Free Pt.2』やコンセプトフォトで黒いレザーのジャケットを着ていたJiminの姿を思い出しました。

 

 

Set Me Free Pt.2→ラストどこかに手を伸ばして黒い渦(ダンサー)に飲み込まれた後で白い服のJiminが登場

 

Like Crazy→冒頭、泥まみれの黒い服の手に引っ張られ夢の中で自分自身を見つけ、部屋に戻ると黒い服の手と同じように泥まみれの手になっている

 

 

『Like Crazy』の鏡のシーンで壁に“Set Me Free”の落書きがあるように、陰に目を背け夢の中に留まろうとするJiminに自己と向き合う時間を与えたその手は『Set Me Free Pt.2』に登場するJiminなのかもしれません。

アルバム『FACE』の中でこの楽曲はちょうど中間に位置していますが、『Like  Crazy(English ver)』をボーナストラックと解釈すれば、『FACE』という物語の最後に位置するのは『Set Me Free Pt.2』です。
そして『Like Crazy』のラスト、泥のついた手でカメラをなぞるJiminは、画面をスワイプしているようにも見えます。スワイプして次の物語(MVや楽曲)に進むことを感じさせる期待感と同時に、画面越しに見ている私たちから、完全体になった彼の姿がよく見えなくなるという演出も解釈の余白があってとても魅力的だと感じました。

 

・・・・・・・・・・・・

 

このように、サウンドやボーカル、MVのストーリーから、一人の人の中にある“表面的な顔“と“内面的な顔”が向き合い一つに混ざり合っていく作品として完成された『Like Crazy』。

ARMYの視点から見たとき、パク・ジミンという青年の物語として受け取れることもまた、この楽曲の大きなポイントなのではないかと思います。
光と陰の間で揺れ動く姿やセンセーショナルなダンスなど、私たちファンの見たかった最高の“Jimin”を見ることのできるこの楽曲の中で、“君”を“ファンの求める自分の姿”あるいはそのまま“ARMY”として受け取ったとき、曲中、騒々しい音楽(世界)の中で光に照らされ本来の自分を見失い、朝が来ないように願いながら酔い潰れる主人公の姿に、過去のコンテンツで明け方まで楽しそうにお酒を飲んでいた実際のジミンくんの姿や、DOCUシリーズで酔ってエモーショナルになり「誰も自分を分かってくれないと泣いた」のだと笑いながら話していた彼の姿を思い出した人もいたのではないでしょうか。

“君が知る僕を取り戻すには遠くまで来てしまったのかな”という詩も自分たちの手に収まらないほど大きくなったBTSという存在が世界に羽ばたいていった頃、ファンに「遠くに行ってしまった気がする」と言われ、当時あったチャット内で「遠くないよ」と優しく声をかけてくれていたジミンくんの姿を思い出しました。

 

“このままでは壊れてしまうけれどこの夢を見続ける方法を探さないといけない”というラストの詩も、2022年の『バンタン会食』で話してくれた長く続けていくための葛藤を思い出します。

 

 

一見すると聴き心地良く軽快なシンセポップジャンルの楽曲でありながらも、その世界観はまるで泥の沼のように深く重く、見る角度によってさまざまな表情に変わるこの曲は、一人のアーティストとしてまるで万華鏡のようにたくさんの魅力を持つ、Jiminの魅力そのものを存分に引き出しているのではないでしょうか。

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。
“内なる声という波紋が共鳴となって誰かに届く”というアルバムコンセプトの願いのように、
この記事を踏まえたあとでこの楽曲がより深く心に届くお手伝いになれば幸いです。