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【MV考察】BTS V 出演 IU『Love wins all』MV 解説

BTS V(テヒョン)が出演したMVも大きな話題となったIUの楽曲『Love wins all』。

映画『コンクリート・ユートピア』でも話題のオム・テファ監督の手がけたMVのストーリーを解説・考察します。

 

youtu.be

 

Love wins all MV 考察・解説

 

ディストピアのような世界で空中を移動するキューブ(四角い物体)から逃げるIUとテヒョン。

二人が逃げ込んだ先には大量の服の山がありました。

 

『Love wins all』MVより

 

この服の山はBTSの『Spring Day(春の日)』にも登場したモチーフで、どちらもクリスチャン・ボルタンスキーの『No Man's Land』から着想を得ているのではないかと思います。

ボルタンスキーの『No Man's Land』で大量の服の山は死者の安息の地を、天井から吊るされた洋服を掴んでは落としていくクレーンは神の手を表しているそうです。
(ボルタンスキーはインタビューにてこの服の山をダンテの二重円のような場所とも話していました。)

 

https://youtu.be/xEeFrLSkMm8?si=3Qi1AwNGogY_J-LQ

BTS 『Spring Day 』MVより

 

二人は“HORIZON PORTAL”という廃墟になったショップでビデオカメラを手にします。
カメラを通して見る世界の二人は現実とは違う生き生きとした姿になり、おいしいものを食べたり幸せな時間を過ごします。

“HORIZON PORTAL”は“境界線の扉”などに訳すことができますが、主人公の二人がいる世界とは別の世界への扉と解釈することができます。

 

『Love wins all』MVより

『Love wins all』MVより

監督のガイドによると、カメラのレンズは“愛のフィルター”を意味するそうです。
同じように二人が逃げ込んだ先でウエンディングドレスとタキシードを着ることも二人の間に流れる揺るぎない愛を表現するアイテムです。

 

幸せな時も束の間に再びキューブに追われる二人。
ビルの外には二人を追うキューブ以外にもたくさんのキューブが世界に存在していました。

 

『Love wins all』MVより

このキューブ(四角)は主人公たちに向けられた差別や抑圧を意味しているそうです。

 

『Love wins all』MVより

キューブに追い詰められた二人の身体は消滅しますが、同時にカメラには二人の身体が浮き上がる様子が映し出されています。
そして二人の着ていたドレスとタキシードが服の山の上に落とされ、物語は幕を閉じます。

 

二人の抜け殻のようなドレスとタキシードが落ちていく様子は、ボルタンスキーの『No Man's Land』で神の手が服を落とすことと酷似しています。

神の手がいつどこで服を掴み落とすのか、私たちは何も分からぬまま、それでも毎日を生き抜く。それが人間の姿なのだ…と制作に関わった方のインタビューで聞いたことがありますが、主人公の二人が必死に抗い互いを愛し合う様子に強く胸を打たれました。

 

オム・テファ監督のガイドによると、“ラストの二人はカメラの中では抑圧から解放され自由に飛んでいけることを意味する”そうです。

 

『No Man's Land』を制作したボルタンスキー氏が、インタビュー記事内で“落ちていく洋服は自由になった魂のように軽やかだ”と話していたこととも共通しています。

 

では、二人は死者の世界へと旅立ってしまったのでしょうか。

 

2023年に観た作品の中で、全く異なる作品でありながら偶然にも同じキーワードに触れた作品がありました。

一つは日本映画『怪物』で、監督が“世界は生まれ変われるか”という問いを台本の1ページ目に書いたというエピソード。

もう一つはNetflixのドラマ『セックス・エデュケーション』の最終話で、ゲイのエリックが自分は望まれない存在だと悩むトランスジェンダーのキャルへかけた励ましの言葉「僕らは存在し続ける。世界が変わるべきだ。」というセリフです。

 

生まれ変わるのは彼らではなく、世界。

 

二人は破滅したような街でキューブに追われる世界から抜け出し、カメラの中の世界で浮かび上がっていきました。

カメラの中の世界とは“HORIZON PORTAL”の向こう側。すなわち境界線の先です。

ひらひらと舞う洋服(自由な魂)のように、カメラの中の世界で彼らは抑圧や偏見から解放されたのでしょうか。

 

 

MVの中で一番大好きなシーンがあります。

無情にもキューブが二人を追い詰める中、IUがテヒョンの見える方の目を覆うシーンです。

恐ろしいものを見なくて良いようにと、愛する人を優しく包み込むこのシーンに、愛に勝るものはないのだというタイトルの言葉の意味を深く感じられたような気がしています。

『Love wins all』MVより

 

loveyourself-rhythm.com

 

 

 

参考記事

https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2233322

GRITtv: Christian Boltanski: No Man's Land - YouTube