BTS RM ソロアルバム「indigo」より、タイトル曲の「들꽃놀이 / Wild flower (with 조유진)」の歌詞の和訳と単語の解説および過去のコンテンツで話していたことからの補足などの考察を書きました。
解説・考察をご覧の際には目次をご利用ください。
들꽃놀이 / Wild flower (with 조유진) 日本語歌詞・和訳
花畑 そこが僕の居場所
空閑地 そこが僕の居場所
名前はない それが僕だ
恥ずかしくはない 僕は僕の墓の上に立っている
地に足がつかないとき
あなたの心があなたを見くびるとき
夢が僕を飲み込むとき
僕が僕じゃないとき
そのすべてのとき
花火に僕は憧れてたんだ
ただ華やかに散りたかったんだ
始まりの前から僕は想像してたんだよ
最後には笑って拍手してあげられるように
僕は願い事をしてたんだ
信じていたことのすべてが遠ざかったとき
このすべての名誉がもうくびきになったとき
この欲望をどうか取り除いて下さい
どんなことがあったとしても
あぁ、僕が僕でいられるようにしてくださいと
あぁ、毎日毎晩
しつこく続く痛みと犯罪者的心理
自分の心臓の音に眠れなかった夜
窓の外にかかった哀れな三日月
素敵な夜になるようにと心から願う
己の身の丈より肥大化した人生
あの飛んでいく風船を必死に握って
問い詰め 尋ねる 一体今 君はどこに
あの空に 散りたい
Light a flower, flowerwork
Flower flowerwork
あの空に まぶしく
Light a flower, flowerwork
Flower flowerwork
どこまでが僕の最後だろうか
全部うんざりだよ、一から十まで全て
このうんざりする仮面はいつ剥がされるのだろうか
僕はヒーローじゃない、僕はヴィランじゃない
何者でもない僕
空回りは繰り返される 記憶は暴れる
僕は横たわる 野原の中に 視線を投げる 空の上に
何を望んでいたのか もう思い出せないんだ
得たと信じていたすべての幸せはわずかな刹那
この先に何があろうとも、僕は行くよ
それが何であれ
夜明けの裾をつかんで吐き出した記憶
声だけ大きい者たちの社会
僕は相変らず沈黙を語る
これは傍白、成熟した帆船
すべての誤解偏見に届くように
嬉しくない 君の胴上げ
僕の両足がこの地の上に
名もなき花たちと共に
二度と星には行けない I can't
足元へ I just go
目的のない目的地に
悲しむ術も知らずに
影さえも友に
僕はいなくなる
あの空に 散りたい
Light a flower, flowerwork
Flower flowerwork
あの空に まぶしく
Light a flower, flowerwork
Flower flowerwork
ふと立ち止まってみたらきらびやかな素足
元々僕のものだったものなど何もないんだ
誰かのようになれなんて言わないでくれよ
僕は絶対に彼らのようにはなれないんだから
(Light a flower)
そう 俺の始まりは詩
今の今まで俺を守ってきた たった一つの力と夢
(Light a flower)
燃える花火から野花へ
少年から永遠へ
この荒涼たる野原に残るだろう
あぁ、いつかは僕に戻るだろう
あの空に 散りたい
Light a flower, flowerwork
Flower flowerwork
あの空に まぶしく
Light a flower, flowerwork
Flower flowerwork
花畑 そこが僕の居場所
そこが僕の居場所
名前はない それが僕だ
恥ずかしくはない 僕は僕の墓の上に立っている
地に足がつかないとき
あなたの心があなたを見くびるとき
夢が僕を飲み込むとき
僕が僕じゃないとき
そのすべてのとき
※和訳は意訳等を含みますので転載・転用はかたくお断りしております
歌詞解説・考察
RMはこの楽曲について次のように紹介しています。
華やかだがすぐに消えてしまい片付けなければならないものが多い花火より、穏やかに咲く野花のように生きていきたいという、僕の望みと混乱を歌った曲。
タイトルの「들꽃놀이 / Wild flower(ワイルドフラワー)」とは、さまざまな自然に自生する野生の花の総称だそうです。
この言葉の通り、花火のように華々しく空に舞い上がり散りたいという欲望と野原に咲く花のように穏やかに生きていたいという葛藤がタイトルからも伺えます。
歌詞の中に出てくる“このすべての名誉がくびきになったとき”という詩に登場する“くびき”とは“思考や行動の自由を束縛するもの”といった意味の単語です。
また“방백(傍白/ぼうはく)”とは、演劇などで用いられるセリフの一種で、ある登場人物が別の登場人物には聞こえないという約束事の上で、観客だけに知らせるセリフのことを指すそうです。
このことから、
“声だけ大きい者たちの社会 僕は相変らず沈黙を語る これは傍白、成熟した帆船”という部分の、沈黙を語った先にいるのは“観客”であり、“成熟した帆船”はBTSそのものを示しているのではないかと考えています。
ナムジュンは昔BTSの7人のメンバーを別々の方向を見ながらも同じ船に乗っている人たちと表現していました。2022年の配信中の話ではBTSは7人だけではなく、ARMYを含む巨大な流れのようなものと話していましたが、この歌詞に出てくるのはBTSという船の在り方の話をしているのだと思いました。
“僕は願い事をしていたんだ”から始まる、大きな成功によって思考や行動の自由がなくなったという詩や、まるで罪悪感に襲われるように高鳴る心臓の音に眠れない夜という詩、身の丈より大きくなってコントロールできなくなった夢に自分が何をしているのか分からなくなったという一連の流れは、『バンタン会食』でナムジュンが涙ながらに語ったここ数年の心境が凝縮されたような詩だと感じました。
特に“僕が僕でいられるようにしてください”と願うという詩には、
あの時話していた「제가 저로써 남아 있어야 된다고 생각해요」という、あまりにも大きくなったRMという名前の中で自分自身が消えていくように感じるけれど、それでも僕が僕として残り続けていたいと思っている。そしてそうやって“僕”というものが残り続けることがBTSを長く続けていくために必要なことだと考えている…といった内容の話を思い出しました。
冒頭と最後のverseに登場するFlowerfield(花畑)という言葉。
“花畑、そこが僕の居場所”という詩の花畑とは、MVの紫色の花びらに包まれる場面からARMYのいる場所を示すのではないでしょうか。
美しい言葉で紡がれた一人の青年の20代の記録の一部分である「들꽃놀이 / Wild flower」。
あまりにも大きなものを背負った青年の中で消えかけていた“僕”の声を聞くことができるような一曲。
いつか彼が今日という日を懐かしく思うその時に、彼を包む名もなき花たちと笑顔でいられることを願って。